位置情報サービスの普及
ここ数年、熱い視線が注がれているのが位置情報サービス(Location Based Service)だ。日本ではジオメディアとも呼ばれ始め,現実社会とネットをつなぐソリューションとして大いに注目されている。
この流れは,iPhoneがリードするスマートフォンの急激な普及とあいまったものだ。特にiPhone3GSでは,「GPS」のみならず「カメラ」「傾斜センサー」「デジタルコンパス」の3点セットがそろっているため,「電脳コイル」が予言していたAR(Argumented Reality: 拡張現実,デジタル情報を現実映像に付与する技術)アプリも現実のものとなった。
これらの技術は,ガートナー社が毎年発表しているテクノロジー・ハイプサイクル(話題先行の技術が実用化,普及するまでのサイクル)の2009年最新版でどのように位置づけられているか見てみよう。
これを図を見ると,技術要素として「位置認識アプリケーション」はすでに成熟しつつあることがわかる。スマートフォンという最高のパートナーシップを得て,サービスないしメディアとして一挙に注目が集まっているのが現在の状況と言えよう。
一方,「拡張現実:AR」技術はまだ黎明期とピーク期(過度な期待としてのピーク)の狭間,つまり成長前期にあり,実用性より話題(過度な期待感)が先行する段階にある。
さて,当記事では,拡張現実も含む広い意味での位置情報サービスに注目し,その類型化や注目サービスの特徴比較にを試みたい。
位置情報サービスの類型化
位置情報サービスは,(1)Foursquareに代表されるコミュニティ系 (2)yelpに代表されるポータル系 (3)コロプラに代表されるゲーム系 (4)セカイカメラに代表されるAR系の4パターンに分類される。それぞれの特徴と代表的なサービスをまとめたのが次表だ。
類型パターン |
概要 |
代表的な位置情報サービス |
コミュニティ系 |
・位置情報を基軸にしたコミュニティ
・米国でiPhone向けを中心に近年サービス急増
・プラットフォームとしてAPIを提供するサービスが多い |
Foursquare/Gowalla/BlightKite/Mytown/
Loopt/zillow/whrri/Rally-Up/G-BRID |
ポータル系 |
・地域店舗の検索サイト。口コミ投稿機能も提供
・既存サービスに位置情報が付与されるケースが多い
・主たる位置情報連携機能は、近隣店舗などの検索 |
yelp/食べログ/ぐるなび/30min/Yahoo!グルメ |
ゲーム系 |
・位置情報を機軸にしたゲーム
・2000年頃から国内で携帯サイト向けにスタート
・地域団体とのタイアップイベント多数 |
まちつく/コロニーな生活☆プラス/ぐるめくじ/国盗り合戦/ケートラ |
AR系 |
・現実の映像にエアタグなどのデジタル情報を付与
・GPS以外に地軸センサーなど高度な端末機能が前提
・検索ポータル機能やルート検索機能の実装も進む |
セカイカメラ/Layer/nearestwiki/pin@clip/東京の地下鉄 |
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コミュニティ系位置情報サービス
さて,現在最大の注目株がこのコミュニティ系だ。草分け的は「BrightKite」で利用者も200万人いるが,メイヤー機能(その場所に最も訪 問した人に与えられる称号)やバッジ機能(さまざまな行動に対して付与される称号)で急激に会員数を増やした「Foursquare」と,その対抗馬で仮想グッズが充実している「Gowalla」に注目が集まっている。また、「G-BRID」も期待だ。
ただし最も成長しているのは最後発の「Mytown」で,利用者は2010年12月に開始されたサービスにもかかわらず利用者はFoursquareを遥かに上回る150万人に達したようだ。特徴はコミュニティとゲームの機能を兼ね備えていること,そのため仮想通貨を持っていることだ。場所にちなんで様々な仮想グッズを購入したり,それをレンタルで仮想通貨を稼げることから,リアル・モノポリー(不動産を売買するボード・ゲーム)とも呼ばれている。
・ 位置情報ゲームのmyTownが150万ユーザーを獲得 (TechCrunch, 3/30)
ポータル系位置情報サービス
レストラン等の施設検索では,米国カナダでは「yelp」,日本では「ぐるなび」や「食べログ」が著名だが,これらのサービスは既存サービスに位置情報を組み込んだ検索などを提供している。クチコミのコミュニティもあるが,核となっているはあくまでレストラン等の施設情報であり,そのポータル機能である点が コミュニティ系と異なっている。
ゲーム系位置情報サービス
前述の「Mytown」もゲーム色の強いコミュニティだが,こちらは携帯アプリ,mixiアプリ,iPhoneアプリなどの本格的な位置対応ゲー ム,いわゆる位置ゲーだ。最も典型的なのは「コロニーな生活☆プラス」,通称「コロプラ」で,地方店舗と結びついた新しいビジネスモデルが注目されてい る。
・ 携帯ゲームが地方救う? 土産物に殺到「コロプラ現象」 (asahi.com,3/31)
AR(拡張現実)系位置情報サービス
「セカイカメラ」に誘引されるように世界的注目が集まったAR系位置情報サービスの中だが,最大のライバルは「Layar」だろう。「セカイカメラ」ではユーザー投稿のエアタグがメイン・コンテンツとなっているのに対して,「Layar」ではあくまで施設情報のエアタグがメインである点が異なる。 そのため「Layar」ではリアルビュー(いわゆるエアタグがリアル映像に写りこむ)だけではなく,マップビューやリストビューがあり,実用性が高い。例 えばリストビューで近隣のコンビニを検索し,そこまでの道順をマップビュー上で表示することができる。そのためiTunesStoreの最新バージョンに おけるユーザー評価でも「セカイカメラ」の2.54点に対して「Layar」は4.17点と遥かに満足度が高いようだ。
以上,表内には,コメント以外に,それぞれのサービスの開始時期,利用者数,API,基本機能,利用環境,特徴・強み,最近の動向,収益モデルを比較してあるので,興味のある方は参照してほしい。